どうやって生きていくのかを考える本「健康第一は間違っている 名郷直樹」紹介

僕は幼少期から、食事のバランスや健康について家庭で散々に叩き込まれてきました。1日3食はもちろんのこと、早寝早起きから適度な運動。食事で足りないものはサプリメントで補助するだけでなく、両親はマルチで売っているような健康食品にまで手を出していたりと、「健康オタク」と言われるレベルの家庭で育ってきました。

一人で生活を始めてからも、食べる順番や栄養バランス、健康を意識しているわけではないのに、出来上がった料理はしっかりとしており、運動も自発的にやってきていました。

でもいつの頃からか「健康って意味があるのか?」と感じ始めたのです。そこで目についたのが本書「健康第一は間違っている」でした。紹介させてください。

「生きている」のか「生かされている」のかを考える本

日本は長寿大国なのはみなさんご存知の通りなのですが、「平均寿命」と「健康寿命」は違います。

「平均寿命」─ 年齢別の推計人口と死亡率のデータを使い、各年齢ごとの死亡率を割り出したもの(wikipediaより)

「健康寿命」─ 日常的・継続的な医療・介護に依存しないで、自分の心身で生命維持し、自立した生活ができる生存期間(wikipediaより)

日本が長寿大国と言われているのは「平均寿命」を見ているからで、「健康寿命」に関しては約80歳ぐらいです。「あれ?そんなものなの?」と意外に感じる人は多いのではないでしょうか。

「とあるジャーナリストが「胃ろう」について問題点を指摘しているのを見ました。「胃ろう」とは簡単に説明すると、食べることも飲むこともできなくなった患者の胃に穴を空け、直接食物を取り入れる方法のことです。

高齢者になるとお世話になる方法なのかもしれませんが、話を聞いていると「長生きしている」のではなく「長生きさせられているのではないか?」と疑問に感じました。他にも延命治療や、治る見込みのない末期の癌患者に大量の抗がん剤を投入したり、「生かされている患者」もいるのではないでしょうか。

これで長寿大国と言われても納得できない人は、僕だけではないはずです。本書の作者・名郷直樹氏は医師として、この疑問点を解決に導いてくれるのが、本書のメインであると感じました。

「生きる価値観」「死の価値観」を考えさせられる

本書は「高血圧に対する治療方法」「がんに対する意見」など医療の問題も取り上げています。著者は医師でありながら、まるで医療を否定しているかのような表現も多く、人によっては不快に感じる部分もあるかもしれませんが、問題はそこではありません。

  • 健康のために何かを我慢する
  • 我慢せずに好きなように飲み食いする

著者は、この2つの価値観をもとに意見を述べ、問題点を指摘しています。もっと言えば、「生の価値観」「死の価値観」をもとにしているとも言えます。

「健康第一」の意味を考えてみる

どちらが正しいのかはわかりませんが、どちらかを押し付けるのはおかしい。「健康第一が正しい」というのも押し付けです。僕は昔から、ここに疑問を感じていたのでしょう。愛する人の健康を、愛する家族の健康を祈るのは当然なのかもしれませんが、「健康のためにこれをしなさい」「健康のためにこれを食べなさい」というのは価値観の押し付けです。

本著を読んで不快に思う方は多いのかもしれません。健康マニア、健康オタクと呼べるレベルの僕の両親が読んだら怒るでしょう。そのため、僕と口論になることもあります。よくわからない高級な健康食品を渡されても拒否しますし、「そんな怪しいものは口にしたくない」と抵抗するからです。

多様な「生と死」の価値観に触れることができる一冊

「どうせ死ぬんだから、好きにやればいいのに」というのが持論なので、「頭のおかしい人」と思われることもある僕からしてみたら、本著は「そうだよね」と共感する箇所がとても多かったです。今後、高齢化社会が訪れるのは免れません。多様な「生の価値観」「死の価値観」を考えるために、本著を手に取ってもらいたいです。

また、僕は最近、叔父を失いました。原因は糖尿病で、闘病中は食事制限を強制されていたのですが、もうダメだとなった時に、「好きなものを食べていい」という家族の意見のもと、好きなだけ食べていたそうです。その時の姿は嬉しそうに「うまいうまい」とバクバク食べていたのだとか。おかげで亡くなる時には丸々と太っており、遺影に写った叔父の写真は、素敵な笑顔でした。

亡くなるまで我慢させられていたら、あんな笑顔はできなかっただろうと考えると、最後は好きなようにして死んでみたいと思います。理想は「あ~楽しかった」と笑って死ぬことです。医療従事者にも読んで欲しい一冊でした。