警察小説が読みたいならマストな一冊「隠蔽捜査 今野敏」を紹介

隠蔽捜査

僕は中学生の頃に「かまいたちの夜」にハマってから推理小説を読むようになりました。それからは「本を読む=推理小説を読む」だったのですが、同じ作者の本を読んでいると刑事が出てきたりするのは当たり前で、推理するよりは人物のキャラクターや周りの人物との関係性だったり、事件の起こらない話も好きになっていきました。

そしてたどり着いたのが「警察小説」というジャンルです。

「隠蔽捜査」の作者である今野敏氏は有名で、僕が最初に読んだのは安積班でした。楽しかったので同じ作者の本を探っていると到達したのが隠蔽捜査でした。たしか、1度は文庫で買って、古本屋で買って、電子書籍で買ってます(笑)

それだけ面白いと感じたこちらの小説を紹介させてください。

「変人」と呼ばれているキャリア警察官僚が主人公の小説

主人公の竜崎伸也は、警察庁に勤めるキャリア官僚で階級は警視長です。

多分、階級を聞いてもわからないのが普通なので説明しますと、刑事ドラマなどでよく聞くのが警部補で、その上が警部です。ここまではわかりそうなものですが、その上が警視になって次が警視正です。一般的な刑事ドラマに出てくるのは警視までぐらいでしょうか。それより上になると「わけわかんね」ってなりますよね。まず、キャリアじゃないと到達できない階級です。

その警視正の上の階級が警視長。よくわかんない方は、こちらをご覧ください。年収付きです。

警察官の階級一覧・階級別の役職・仕事内容・年収を解説 | 警察官の仕事・なり方・給料・資格を紹介 | キャリアガーデン(Career Garden)

警察官を目指す人のための職業情報サイト|キャリアガーデン

careergarden.jp

竜崎は警察庁の総務課長をしていて、主にマスコミ担当です。そんな官僚が主人公の小説なんて面白くもなんともなさそうなのですが、原理原則を重んじるあまりに周りから「変人」と呼ばれる性格なものですから、一味も二味も違う面白さになっているのです。

警察上層部から事件の隠蔽を迫られる竜崎

ネタバレにならない程度のあらすじを。警視庁の管轄内で殺人事件が発生。マスコミ担当の竜崎は動くことになるのですが、事件を調べていると、あることに気づきます。「これは、警察官が犯人じゃないのか」と。それが事実であれば、大スキャンダル。警察としてのメンツが丸つぶれになります。

しかし、竜崎は原理原則がモットーでもあり、警察官という仕事に誇りを持っているだけではなく、「国家公務員は国のために働くべき」という信念をもとに、マスコミに公表しようとするのですが、上からストップがかかります。

「隠蔽しろということか」

縦割りの官僚システムでは逆らうこともできず、彼は葛藤します。「いずれは知られてしまうことだから、早めに公表したほうがいい」と詰めかけますが、うまくいきません。そして、彼の家庭でも問題が起こります。東大受験を控えていた息子が大麻を吸っていたのです。

そのことを知っているのは竜崎のみ。彼の信念を貫くなら息子を警察に突き出すべきですが、家庭内で犯罪があれば昇進の道は絶たれてしまい、キャリア官僚としての人生は終わりを迎えてしまいます。幼馴染でもあり同期の伊丹刑事部長は「隠蔽しろ!」と彼のことを思って進言しますが、一体どうなるのか。

「前例がないならやってみればいい」官僚らしくない警察官

一般的な刑事モノの小説やドラマなら「所轄とキャリア」だとか、「ノンキャリとキャリア」で揉める場面が多々あります。でも、ほとんどは所轄側だったり、ノンキャリへ肩を持ちがち。それは、キャリアは現場での経験は少なくて、「使えない」ということが多々あるからなのでしょう。

そもそも、彼らは書類仕事がメインです。(本当はノンキャリの警察官も書類仕事がメインですが)現場で役に立つ方が珍しいわけです。

竜崎は警視長という階級でもあり、総務課長を務める「現場とはほぼ全く関係のない仕事」をしており、現場の刑事からしてみると邪魔でしかないはずです。なのに、竜崎が指揮をとることで事件は解決の方向へと進んでいきます。

それはなぜなのか。竜崎は今までの警察官がやってきたこととは違った手法をとるからです。「前例にないことはしない」という官僚にありがちなことは言いません。「国家のために」が最優先なので、「誰が考えたってやるべきこと」ならガンガンやります。その姿をみると、部下たちも、ノンキャリの警察官だって見方を変えます。

伊丹は「そんなことをして失敗したらどうするんだ?」と反対することもありますが、「責任は全て俺がとる」という竜崎。これが変人と呼ばれる所以です。

家庭ではそこまで頼りにならなかったりもする

優秀で仕事もできて、部下からの信頼も厚い竜崎ですが、家庭ではあまり頼りになっていません。朝起きれば各社の新聞を読み、事件がないかのチェックをして朝食をとる。帰宅してからは1日のご褒美としてビールを一本だけ飲む。

家族との会話はありますが、彼は全て論理的に話します。恋愛などに関してもです。そのため、娘からも変人と呼ばれたり、奥さんからも呆れられることもあったり。決して家庭の仲は悪くないのですが、仕事をしている時と比べてみると、家庭での竜崎はあまり頼りになりません(笑)

竜崎の周りの人物も一癖あり

竜崎との幼馴染でもあり、警視庁の刑事部長でもある伊丹俊太郎。階級は同じく警視長ですが、出身大学はキャリアにしては珍しい早稲田大学卒です。そのため、これ以上の昇進は望めないと諦めている様子も。

一般的な刑事ドラマや小説を読んでいると、刑事部長ってほとんど見かけませんよね?どれぐらい偉いのかといえば、都道府県警本部の「上の方」ってな感じです。殺人などの刑事事件が起こると捜査本部が立ち上がりますが、最初だけちょろっと顔を出す程度。何か問題があると、記者会見をするレベルの偉い人です。

竜崎は幼い頃、彼にいじめられていたと言っていますが、伊丹は「え?そんなことしたか?」と覚えはないようです。これは認識の違いなのか、どうなのかはいまだによくわかりません。僕としては、親しくしていたようにも見えます。

人柄はよく、部下からの信頼もとても熱く、マスコミ受けを狙う部分もあります。でも、竜崎の前ではちょっぴり情けない部分も見せたりもして、愛着の湧くキャラクターでもあります。隠蔽捜査シリーズでは、毎回登場するキャラクターです。

大森署の署員たち

事件の起きた管轄の刑事・戸高善信。お世辞にも「素敵な警察官」とは言えず、見た目は汚らしくギャンブル好き。口も悪く、初めて竜崎に会った時は「キャリアがよ」と悪態をつくタイプの刑事です。

ただ、事件を解決する糸口を掴んでくることも多く、勤務態度はともかくとして、刑事としては優秀で上司からも買われています。竜崎も例外ではなく、彼のことを買うようになります。

過去になにがあったのか、薬物に関わる事件には、我を失うほどの執念さを燃やして捜査しています。

大森署副署長・貝沼悦郎は、まるでホテルマンのように淡々と仕事をこなします。竜崎は「自分のことを苦手に思っているのでは?」と考えています。

推理ではなくて竜崎のキャラクターが魅力の作品

隠蔽捜査の見どころは間違いなく竜崎という人物そのものです。言っていることは全て正しく、「そういえばそうだ」と気づかされることも多々あります。気難しい人にも思えますが、決して冷たい人ではありません。僕としては、会社の上司になってほしいじ人物ナンバーワンです。

原理原則だけではうまくいかないこともありますが、世の中の人々は彼のような人物を求めているのではないでしょうか?フィクションではありますが、「リーダーシップとは何か?」を教えてくれる本でもありました。

警察小説と言えば、まず思いつく隠蔽捜査。たくさんの人に読んでほしい小説の一つです。

なお、隠蔽捜査はドラマ化されています。竜崎の配役はピッタリで楽しかったです!

隠蔽捜査|ドラマ・時代劇|TBS CS[TBSチャンネル]

今野敏原作の大ヒットシリーズを、杉本哲太・古田新太W主演でドラマ化。警察内の権力闘争や人間関係を多彩なキャストで描く。

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