未来の暗号開発者は絶対に読んで欲しい「暗号解読 サイモン・シン」を紹介

暗号解読

タイトルを見て、何の話かわからない人はたくさんいるはず。本書は簡単に説明すると「暗号の歴史」の本です。パズル的な要素や数学的な要素もあるため、なんとなく「難しそう」と感じてしまうかもしれませんがご心配なく。非常に読みやすいです。簡単な問題もあって、解きながら読み進めることもできるし、頭の体操にもなりました。

そんなサイモン・シン4部作の1つでもある「暗号解読」を紹介させてください。

暗号を利用する必要性

「暗号」と聞くと、何を思い浮かべますか?ATMのパスワードや、よく利用している通販サイトのパスワードでしょうか。それとも推理小説で出てくるようなダイイングメッセージでしょうか?

歴史上で主に利用されてきた暗号は、戦時中の連絡手段としてです。戦争で勝利するためには情報が必要なのは言うまでもないのですが、こちらの情報を味方に伝達する時には注意が必要です。敵に情報が漏れてしまうと裏をかかれてしまい、壊滅的な被害を受けることになるからです。

極秘文書を伝達係に手渡して作戦本部に送る必要があるのに、敵に奪われる危険性もある。ここで利用されたのが暗号です。書いた人物と、受け取った人物にしかわからない暗号が、随分と昔から利用されていました。

暗号とは情報を守るもの。現代まで積み重ねてきた技術でもあるのです。

解読方法の説明が面白くためにもなる

小さな頃に、暗号を作ったことはありませんか?ポケベル世代の方なら、数字を並べたメモを授業中に書いて、目的の人物に生徒たちを通して手渡したこともありますよね。オリジナルの暗号を作って、友人と解きあったりもしますよね。まずは本文を書いてローマ字に直し、アルファベットを逆から並べてみたり、一文字ずつずらしてみたり。子供の頃によく使う暗号です。

このタイプの暗号には解読方法があります。

最も多く現れる数字・文字に注目すると解読できる

英語で最も使用するアルファベットは「e」と言う点に注目してみると、自然と答えが見えてきます。

不規則にアルファベットが並んでいる暗号があったら、まずは出現頻度の高い文字を探してみる。暗号の中で一番使われている文字が「u」だとしてら、本来は「e」の可能性が高いというわけです。このように推測して解読していく方法も本書で説明されていて、そこまで考えたことはなかったので「ああ~なるほど」なんて思いました。

今でも行われているであろう暗号解読戦争

昔の人たちも、最初は簡単な暗号を利用していたようですが、暗号を作る人がいれば、解読しようとする人もいます。戦争の極秘情報なら解かれてしまうと大打撃です。かつての日本も暗号を解読されて裏をかかれたこともありますし、過去にあった世界中の戦争でも、同じようなことはたくさんあったようです。

いかにして解読するか。いかにして解読されないようにするか。戦争の歴史の裏では、また別の戦争が行われていたのです。これは、インターネットを利用するのが当たり前になった現代でも同じようなことが行われています。ハッキングや乗っ取り、重要機関を守るために、数学者や技術者が努力してくれていることもよくわかります。

エニグマについての詳しい解説あり

本書では戦時中の暗号についての記述が多く、ナチス・ドイツに詳しい方ならご存知の「エニグマ」について、図解付きでかなり詳しく解説されています。興味を持っている方なら確実に興奮するでしょう。

エニグマ
エニグマ ─ Wikipediaより

いつの時代にも、どの分野にも天才はいるようですが、暗号の世界の天才は一味違います。彼らの脳の構造はどうなっているのでしょうか。難しいことをわかりやすく解説しているサイモン・シンもすごいですし、自分の脳の貧弱さに嫌気がさしてしまいます。

表に出てくることはない暗号開発者

戦時中に利用する暗号に関しては、機密情報に値するため開発者が表に出てくることはありません。その一人がチューリングでした。名前を知っている方はたくさんいますよね?

暗号を作っていた現役の頃は仕事を隠さなければならず、業績は数十年後にしか公開されず、ほとんどは亡くなってから偉業を称えられることになるという。給料は良かったのかもしれませんが、孤独でもあったはずです。

中には監禁に近い状態で職を全うした暗号開発者もいたでしょうし、現在もいると考えたほうが自然です。国防に関する暗号なら国家機密の中でも最重要な部分でしょうから、家庭を持っている方なら一般企業に勤めているように見せかけて、長期出張という形をとっているのかもしれません。

暗号開発者にもっと賞賛を

暗号開発者の中には、チューリングのように悲しい結末を迎えた者もいます。

僕たちの国や生活を守るために彼らは存在しています。軍事や政府に関わるものに関しては、技術者の存在も隠されているでしょうから、彼らが日の目を見るときは、亡くなってから何年も経った後になります。国のために偉業を尽くした開発者たちに、もっと賞賛を送りたいと感じました。

量子コンピューターによって暗号技術は変わっていくのか

暗号を作る者がいれば、解読しようとする者もいて、いつまで経ってもイタチごっこで、新しい技術が生まれると破られる。

本書では量子コンピューターについても触れていて、一般的に普及すると解読技術は大きく変わるそうです。量子コンピューターなんて名前ぐらいしか聞いたことがなかったのですが、本書を読むことででちょっと理解することができました。

僕がいま、キーボードを叩いているパソコンとは違う種類のもので、計算方法自体が違うんだそうです。まだまだ知らない未来が待っていると考えると、ワクワクします。

「暗号について」知っておくべきと考える一冊

僕たちは普段の生活の中で、暗号に触れていますし、利用もしています。ATMでお金を下ろすとき4桁の番号を入力しますし、通販サイトで個人情報を入力している時にも暗号技術が使われています。「暗号技術」と聞くと難しそうですが、簡単に言えば、あなたの財産・個人情報を守るための技術です。

現在でも本当の意味で完璧な暗号技術はありません。ネットバンクやECサイトの暗証番号を定期的に変更を促されるのがいい証拠です。「第5の戦場」と言われるサイバー空間上の戦争に対して、セキュリティーの重要性が問われる現代。技術者たちは完璧な暗号技術を作ることはできるのか。

僕たちが何気なく利用しているネット上の裏で、暗号技術者は活躍しています。目立つことはないし、注目もされない彼ら技術者たちに感謝の気持ちを送りたい気持ちでいっぱいです。

未来の暗号開発者・解読者はぜひ本書を手に取っていただきたいです。

なお、著者のサイモン・シンは前作オススメできます。暗号解読を読み終わったら、「宇宙創成」もどうぞ。